■トコジラミ(ナンキンムシ)
国内での吸血被害の発生数が増加傾向にある「トコジラミ」は、悪臭(あくしゅう)で知られるカメムシの仲間です。
世界中の温帯地域に分布しています。
体は扁平(へんぺい)な楕円形(だえんけい)で,幼虫,成虫ともにヒトや動物から吸血し,痒(かゆ)みなどの被害をあたえます。
■歴史
日本には江戸時代末期に外国船から侵入したとされ,明治時代に大阪,名古
屋,東京で被害がありました。
第二次世界大戦後には,都市部を中心に全国に多数みられましたが,東京オリンピック後から被害が減少し,一時はほとんどみられることがなくなりました。
しかし,最近になって全国各地で被害が増加しています。
■生態
・雌(めす)は一生の間に約100から500個の卵を産みます
・卵は乳白色で,大きさは米粒の 1/4くらいです
・成虫も幼虫も同じ形です(完全変態)
・夜間に活動し,ヒトや動物から吸血します
・日中は暗くて狭い場所にひそんでいます(次頁の生息場所を参照)
・飢餓(きが)に対して強いです(23℃下で,雄(オス)は85日間,雌
は69日間生存(せいぞん)したという記録があります)
(※トコジラミは長期間、状況によっては1年以上も食糧を取らずに生存できます。また、気温が13℃を切る日が何日か続くとある種の冬眠状態に入るため、暖房のない建物では、トコジラミの被害は季節性を持ったものとなります。)
All About Bed Bugs - BB ALERT®
■生息場所
昼間は,壁や壁紙,柱のさけ目,床板のあいだ,ベット,その他の家具の隙間(すきま)などに潜(ひそ)んでいます。
(*生きたトコジラミ,糞(ふん) ,脱皮殻(だっぴから) ,卵などで汚れていることが特徴です。 )
■被害
夜間, 寝ている間に頭, うで, 足などの肌が出ている部位から吸血されます。
はげしい痒みに襲(おそ)われ,不眠の原因となります。ヒトによっては,咬
まれた部位が赤くなり,腫(は)れたり,発熱をともなうことがあります(痒
みなどの症状には個人差があります*。
* 1回目の被害では痛みや症状もなく気がつかなかったが,2 回目以降(いこ
う)は,痒みなどが出る場合や被害を受けることが重なってくると症状が軽
くなることもあります。
■駆除・防除
・日常の掃除や年数回大掃除をすることが大切です
・トコジラミに吸血された場合は,被害にあった部屋の 4 隅の角の天井から
床を調べて,生息場所を見つけましょう
★生息場所を発見したときは…
1.細い針金などでトコジラミを隙間(すきま)から掻(か)きだし,掃除
機で吸引しましょう
2.ゴキブリ用ノズル付殺虫剤を使用し,生息場所の隙間に注入しましょう
(薫煙(くんえん)型殺虫剤では,効果がうすいことがあります)
※スーパートコジラミにも効果があると言われている殺虫剤
■事例の紹介
1、海外旅行で使用した荷物の中に虫がいた
2,寝ている間に何かに刺され痒くなり,虫がいたので捕まえた
<参考図書,参考文献>
1.松崎沙和子 武衛和雄 著 : 都市害虫百科(1993)
2.安富和雄 梅谷献二 著 : 衛生害虫と衣食住の害虫(1983)
3.加納六郎 編 大滝論子ら 著 : 節足動物と皮膚疾患(1999)
4.渡辺 護 : トコジラミ問題の現状と対策 ねずみ・衛生害虫駆除研究協
議会資料(2008)p.67~74
5.山梨県福祉保健部衛生薬務課 衛生公害研究所 : 日常生活と身のまわり
の虫たち(2001)